「エンジンがかからない」「事故で走れない」「故障の修理代が車の価値を超えた」——動かなくなった車を前にすると、多くの人は「もう売れない、処分にお金がかかる」と考えます。実態は逆です。筆者は自動車解体・中古車輸出を本業とし、不動車・故障車を日常的に買い取る側にいます。この記事では、動かない車に値段が付く仕組みと実際の相場水準、そして高く手放すための業者の使い分けを解説します。

なお、廃車手続きそのものの流れは動かない車の処分方法の記事で解説しています。この記事は「いくらで、どこに売るか」に絞ります。

結論:不動車の減額は、実データではほとんどない

先に相場の実態からいきます。当サイトが集計している業者間オークションの実落札データ(1,900台)で、自走できる車と不動車を比べた帯がこちらです。

区分実落札の帯(中央50%)中央値
軽自動車・自走可3.5万〜7.3万円4.3万円
軽自動車・不動3.1万〜5.7万円3.6万円
普通車・自走可8.2万〜15万円10.9万円
普通車・不動8.3万〜15.8万円11.1万円

見てのとおり、軽自動車の不動減額は1〜2割程度、普通車に至っては減額がほぼ確認できません。これは業者の仕入水準(買取店の提示はここから流通コスト分の差が出ます)ですが、「動かない=価値がない」がいかに実態とズレているかは明らかです。

理由は単純で、このゾーンの車の値段は「走れるかどうか」ではなく分解値——部品・素材・輸出需要の合計——で決まっているからです。買い手(解体業者・輸出業者)はどのみちレッカーや積載車で引き取るので、自走できるかどうかは輸送の手間の差でしかありません。

部品輸出コンテナの積み込み途中。床にエンジン、上段にタイヤと外装
輸出コンテナの積み込み。床にエンジン、上にタイヤ・外装。「動かない車」もこうして商品の集合体として流通する

故障箇所別・買い取る側の値付けの見方

「どこが壊れているか」で買い手の見方は変わります。実務の感覚を故障箇所別に書きます。

エンジン故障・エンジンがかからない — 最も相談が多いケースですが、買い手側の評価は冷静です。エンジンが死んでいても、触媒(貴金属)・足回り・外装・電装・内装の価値は無傷。エンジン本体も、載せ替え用・リビルト素材・海外向けとして需要があります。原因の切り分けと対処はエンジンがかからない車の記事にまとめています。

ミッション・駆動系の故障 — 修理すると数十万円コースですが、買い手は直しません。車体側の価値で値付けし、ミッションは部品として処理します。「修理見積もりが高い=車の価値がない」ではない点が重要です。

ハイブリッドバッテリーの劣化・故障 — プリウスやアクアで増えている相談です。駆動用バッテリーにはリビルト市場があり、交換前提の値付けが成立します。ハイブリッド車は輸出需要も厚いため、バッテリーが死んでいても値段は残りやすい部類です。

電装系・水没 — 電装は個別部品の集合として評価されます。水没歴がある場合は評価の仕方が特殊なので、水没車買取の記事をご覧ください。

回収された電動パワステユニット
回収した電動パワステユニット。リビルト需要のある補機類は、車が動かなくても1点ずつ商品になる

どこに売るか——故障車の状態別・業者の使い分け

不動車・故障車と一口に言っても、最適な売り先は状態で変わります。

あなたの車の状態向いている売却先
年式が古い・故障や不動で、素材・部品の価値が中心廃車買取専門(0円以上保証・レッカー無料の取次型)
事故が原因の不動で、高年式・時価が数十万円残るタウなど事故車専門オークション
軽微な故障で、直せば普通に走る値が付く車まず修理と売却の損得比較。売るなら一括査定も土俵

迷ったら出口診断ツール(無料・個人情報不要)で車種・年式・状態から確認できます。該当車種は業者間の実落札帯も表示します。

申し込む前のチェック5点

  1. レッカー・引取が無料かを最初に確認する。不動車は引取コストが業者持ちかどうかで手取りが大きく変わります。「買取額は付くが引取有料」は本末転倒です
  2. 状態は正直に伝える。不動の原因(エンジン・事故・バッテリー上がり)、部品の欠品は先に言うのが結局得です。分解値の世界では多少の故障で値段は崩れません
  3. 車検切れでも問題ないが、公道は走れない。引取前提で話を進めてください。詳細は車検切れの車の記事
  4. 還付金の扱いを確認する自動車税重量税・自賠責が査定額込みか別精算かで実質の手取りが変わります
  5. 0円提示は即決しない。上の実落札帯のとおり、業者間では不動車にも値段が付いています。型の違う業者でもう1社だけ相見積もりを

まずは不動車・故障車OKの定番から

素材・部品価値が中心の車を、手間なく確実に手放すなら取次型の定番です。

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事故が原因で動かない高年式車は、事故車専門の土俵のほうが伸びます。

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まとめ

  • 不動車・故障車にも値段は付く。実落札データでは普通車の不動減額はほぼゼロ、軽でも1〜2割
  • 値段の土台は分解値(部品・素材・輸出需要)。エンジンやミッションが壊れていても他の価値は無傷
  • 売り先は状態で使い分ける。素材部品→廃車買取専門/事故由来の高年式→事故車専門/軽微故障→修理との損得比較
  • レッカー無料・還付金・0円即決しない、の3点は必ず押さえる

なお、本記事の帯・相場の記載は当サイト集計の実務データにもとづく執筆時点の目安であり、査定額・買取額を保証するものではありません。実際の金額は業者の現車確認で確定します。