「その年式だと値段は付きませんね」——廃車の見積もりで、誰もが一度は聞くセリフです。では、そうやって引き取られた車は、その後業者の世界でいくらで取引されているのでしょうか。

当サイトは、廃車ゾーンの車両が流通する業者間オークションの落札実績を1,900台分(2026年5月〜7月)集計しました。一般に公開されることのない「業者が実際に払っている値段」のデータです。結論から言うと、「0円」と言われがちな車の多くに、業者間ではしっかり値段が付いています

ヤードに停まる白の20系プリウス前方
買い取った20系プリウス。国内では立派な低年式車でも、廃車ゾーンでは車種別で最も高い帯で取引される

全体像:中央値8.1万円、半数が4.2万〜13.1万円

1,900台の落札価格の分布はこうなりました。

区分実落札の帯(中央50%)中央値台数
軽自動車・自走可3.5万〜7.3万円4.3万円724台
軽自動車・不動3.1万〜5.7万円3.6万円192台
普通車・自走可8.2万〜15万円10.9万円770台
普通車・不動8.3万〜15.8万円11.1万円214台
全体4.2万〜13.1万円8.1万円1,900台

帯は取引の中央50%(下位25%〜上位25%)。最高値は45.8万円でした。もちろんこれは業者間の仕入水準であり、買取店が売り手に提示する金額はここから引取・手続き・利益などの流通コスト分の差が出ます。それでも、「価値ゼロ」どころか軽でも数万円、普通車なら10万円前後が業者間の標準だという事実は、売り手が知っておいて損のない物差しです。

発見1:年式では、ほとんど下がらない

「古いから値段が付かない」は、このデータでは確認できませんでした。

初度登録全体の中央値軽自動車普通車
2005年以前7.5万円3.7万円12.9万円
2006〜2012年7.8万円3.9万円10.1万円
2013年以降9.2万円6.8万円11.2万円

注目は普通車です。2005年以前(20年落ち前後)の中央値12.9万円は、2013年以降の年式帯より高いという逆転が起きています。古い普通車ほど旧車・輸出向けの部品需要が厚い個体が混ざるためで、廃車ゾーンの値段が「中古車としての商品価値」ではなく素材と部品の価値で決まっていることをよく示しています。カラクリの詳細は素材価値の解説記事に書いたとおりです。

発見2:走行距離も効かない——20万km超がむしろ最高値帯

走行距離中央値台数
10万km未満8.1万円743台
10万〜15万km7.6万円610台
15万〜20万km7.6万円378台
20万km以上10.7万円169台

国内の中古車査定で最大の減額要因になる走行距離が、廃車ゾーンではほぼフラット、それどころか20万km超の帯が最高でした。過走行になるまで使い倒される車(ハイエースなどの商用系・ディーゼル)は、エンジンや駆動系の部品需要が強い車種でもあるためです。「過走行だから0円」と言われたら、それはその店の売り先がないだけの可能性があります。

発見3:「不動車の減額」は軽自動車だけの現象だった

不動車(自走できない車)は引取にレッカーや人手がかかるぶん安くなる——キー紛失車の記事でも書いた構造ですが、データで見ると意外な結果になりました。

  • 軽自動車:自走可 中央4.3万円 → 不動 3.6万円(約15%低い
  • 普通車:自走可 中央10.9万円 → 不動 11.1万円(差がほぼない

軽は1台あたりの価値が小さいため引取コストの重みが相対的に大きく、はっきり減額に出ます。一方、普通車の不動車には事故現状車など部品価値の高い個体が多く混ざり、分解値で値付けされるため自走できるかどうかがほとんど効かない——「不動=大幅減額」という一般論は、少なくとも普通車では成り立っていませんでした。

発見4:同じ「廃車」でも車種で4倍違う

取引の多かった車種別の帯です(30台以上の11車種)。

車種実落札の帯(中央50%)中央値台数
トヨタ プリウス16万〜18.6万円16.9万円36台
トヨタ ヴォクシー13万〜16万円14.7万円31台
日産 セレナ9.1万〜11.4万円10.1万円51台
ホンダ フィット8.4万〜13.3万円10万円68台
スズキ エブリイ7.7万〜10.7万円10万円30台
ホンダ ステップワゴン8.8万〜10.2万円9.6万円34台
日産 ノート7.8万〜10.5万円9.1万円37台
ホンダ N-BOX5万〜10.3万円7.6万円31台
スズキ ワゴンR3.6万〜4.5万円4万円101台
ダイハツ タント3.4万〜5.7万円3.8万円63台
ダイハツ ムーヴ3.3万〜4.4万円3.8万円61台

ワゴンRとプリウスでは4倍以上の開きがあります。ハイブリッド(駆動用バッテリー・触媒)、ミニバン(海外実需)、商用バン(部品・輸出)は廃車ゾーンでも上位に来る——つまり「廃車=一律いくら」ではなく、車種を言うだけで相場の見当が付く世界です。

前部を損傷しバンパーが外れた白の事故現状車
前部を損傷した事故現状車。壊れた部分以外の部品と素材の価値で値付けされる——普通車の不動・事故現状で値段がほぼ落ちない理由がここにある

売り手はこのデータをどう使うか

  1. 「0円です」を鵜呑みにしない。あなたの車と同じ区分の業者間水準(軽なら3.5万〜7.3万円、普通車なら8.2万〜15万円)を物差しに、複数の業者を比較する
  2. 年式・過走行を理由にした0円提示は特に疑う。データ上、廃車ゾーンの価格は年式・走行距離でほぼ下がりません
  3. 普通車の不動車は諦めない。自走できなくても業者間の値段はほぼ同じ。引取無料+買取額の付く業者を探す価値があります
  4. 還付金を忘れない。買取額とは別に、自動車税重量税・自賠責の還付があります

なお、この実落札データは当サイトの出口診断ツールにも組み込みました。車種・状態を入力すると、あなたの車と同じ区分(主要車種は車種別)の実落札帯が診断結果に表示されます。個人情報の入力は不要です。

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まとめ

  • 廃車1,900台の業者間実落札は中央値8.1万円。軽で約4万円、普通車で約11万円が標準
  • 年式・走行距離ではほぼ下がらない。20年落ちの普通車や20万km超がむしろ高い帯にいる
  • 不動の減額は軽のみ(約15%)。普通車は自走可否でほぼ差がない
  • 車種差は4倍超。プリウス・ミニバン・商用バンは廃車ゾーンでも二桁万円

「値段が付かない」と言われた車の裏側では、こういう取引が毎週動いています。自分の車の帯は出口診断で確認してみてください。

なお、本記事の数値は当サイトが集計した業者間オークション落札実績(2026年5月〜7月・1,900台)にもとづく執筆時点の目安です。業者間の仕入水準であり、買取店の提示額・実際の売却額を保証するものではありません。相場は素材市況・為替・部品需要により変動します。