親から車を譲り受けた、知人から個人売買で買った、夫婦間で名義を移したい——そうした場面で必要になるのが車の名義変更(正式には移転登録)です。買取店やディーラーに売る場合は業者が代行するので自分でやる機会はありませんが、個人間の譲渡では自分で運輸支局へ行くことになります。

筆者は自動車の買取・輸出を本業とし、名義変更・抹消の書類を日常的に扱っています。この記事では、譲る側・受け取る側で分けた必要書類費用の内訳当日の手順、そして窓口で実際に出戻りになっているミスを、実務の側からまとめます。なお、お手元の車が軽自動車なら手続きがまるごと違うので、軽自動車の名義変更の記事をご覧ください。

名義変更とは——「移転登録」を運輸支局で行う手続き

普通車(登録自動車)の所有者を変える手続きは、法律上は移転登録と呼びます。窓口はナンバーを管轄する運輸支局(陸運局)で、所有者が変わった日から15日以内に行うことになっています。

手続きの主役は新しい所有者(受け取る側)です。譲る側は書類を渡すだけで窓口に行く必要はなく、受け取る側が書類一式を持って運輸支局へ行きます。これが「誰が何を用意するか」を分けて考える出発点です。

必要書類——譲る側・受け取る側で分けて用意する

誰が書類注意点
譲る側(旧所有者)譲渡証明書実印を押す)車名欄はメーカー名。修正液不可
譲る側印鑑証明書(発行後3か月以内車検証の住所と一致していること
譲る側委任状(実印)譲る側本人が窓口に行かない場合。ほぼ必ず必要
受け取る側(新所有者)印鑑証明書(発行後3か月以内)と実印本人が行かないなら委任状(実印)
受け取る側車庫証明書(自動車保管場所証明書。発行後1か月以内先に警察署で取る。数日かかる。取り方は車庫証明の記事
受け取る側車検証(自動車検査証)の原本電子車検証の場合も原本を持参
当日窓口で申請書(OCR第1号様式)・手数料納付書・自動車税の申告書窓口で入手して記入。印紙は窓口で購入
管轄が変わる場合ナンバープレート(車ごと持ち込み)封印の付け替えがあるため車で行く

譲渡証明書と委任状は、それぞれの記事で様式の記入例を図解しています。実印を押すのはどちらも「譲る側」だけで、受け取る側は自分の申請に自分の実印を使う、という整理です。

費用の内訳——自分でやれば実費のみ

項目金額の目安備考
登録手数料(印紙)500円移転登録の法定手数料
車庫証明2,000〜2,550円申請手数料のみ(都道府県で異なる)。標章代は2025年4月に廃止。車庫証明の取り方
印鑑証明書・住民票各300円前後譲る側・受け取る側それぞれ
ナンバープレート代1,500〜2,000円前後管轄が変わる場合のみ。希望ナンバーは4,400〜6,400円程度(希望ナンバーの取り方
自動車税環境性能割取得価額による中古車の取得価額が50万円以下なら非課税。親族間の無償譲渡も価額次第
(代行を頼む場合)代行費用1万〜3万円前後ディーラー・行政書士。書類取得を含むかで差

つまり自分でやれば数千円で済み、代行との差額の大半は「平日に運輸支局へ行く手間」の値段です。金額はすべて執筆時点の一般的な目安で、地域・依頼先により異なります。

自分でやる場合の手順(当日の流れ)

  1. 書類を揃える。上の表の「譲る側」の3点を先に受け取り、自分の印鑑証明書を用意する
  2. 車庫証明を先に取る。警察署に申請して交付まで数日。発行後1か月以内に使う(必要書類と書き方)。希望ナンバーにするならこの時点で申し込む
  3. 運輸支局へ(管轄が変わる場合は車で)。申請書(OCR第1号様式)・手数料納付書・自動車税の申告書を窓口で入手して記入し、印紙500円を購入して貼る
  4. 登録窓口に提出。不備がなければ待ち時間を挟んで新しい車検証が交付される
  5. 税申告窓口で自動車税(環境性能割・種別割)の申告
  6. 管轄が変わる場合はナンバー交換と封印。旧ナンバーを返納し、新ナンバーを取り付けて封印を受ける

慣れていれば1〜2時間、初めてでも半日あれば終わります。運輸支局は平日の日中のみなので、そこだけ確保してください。

窓口で出戻りになりやすいミス——実務で多い順

書類は揃っているのに受理されない、というケースの多くは次のどれかです。

  1. 印鑑証明書の期限切れ(3か月)と車庫証明の期限切れ(1か月)。取得日と提出日の間隔に注意
  2. 車検証の住所と印鑑証明書の住所が違う。譲る側が引っ越し後に住所変更登録をしていないパターンで、住民票(または戸籍の附票)で住所のつながりを証明する書類が追加で必要になります
  3. 譲渡証明書の車名欄に車種名を書いている。正しくはメーカー名(例:トヨタ)。譲渡証明書の記事で最頻出のミスとして解説しています
  4. 委任状が白紙(委任事項・車両情報が空欄)。委任状の記事のとおり、埋まった状態で実印を
  5. 車検証の所有者がディーラーやローン会社。所有権留保が付いているため、先に所有権解除の書類(ローン会社発行の譲渡証明書・委任状・印鑑証明書)をもらわないと名義変更できません。ローンが残っている車の記事で解説しています

状況別の注意点

  • 親から子・夫婦・家族間の譲渡 — 手続きは他人間と同じです。「家族だから」の省略はできず、譲る側の実印と印鑑証明書が必要。無償譲渡でも環境性能割は車の取得価額で判定されます
  • 個人売買 — 代金の受け渡しと書類の受け渡しを同時に。譲る側は「印鑑証明書を渡したら、名義変更の完了(新しい車検証の写し)を確認するまで」が手続きです。放置されると自動車税の通知が自分に来続けます(名義変更と抹消登録の実務
  • 相続(所有者が亡くなった場合) — 通常の移転登録とは必要書類が異なり、戸籍謄本や遺産分割協議書が加わります。相続の名義変更は別途まとめる予定です
  • 譲るより売ったほうがよいケース — 10年超の車でも輸出需要のある車種は業者間で値が付きます。家族に安く譲る前に、出口診断ツール(無料・個人情報不要)で車種・年式から相場の方向性を確認しておくと判断材料になります

名義変更と一緒に済ませたい「自動車保険」の手続き

見落とされがちですが、車の名義変更と自動車保険の手続きは別物です。運輸支局で名義を変えても、保険は自動では移りません。

  • 受け取る側は、自分の名義で保険に入るか、既存契約の車両入替を保険会社に申請します。無保険の期間を作らないよう、名義変更の日(車を受け取る日)から補償が始まるように手配してください
  • 等級の引き継ぎができるのは、記名被保険者の配偶者か同居の親族までです。別居の子が親の車を受け取る場合は等級を引き継げず、新規契約になります
  • 新規契約になる場面は、複数社の保険料を比べやすいタイミングです。保険料は会社ごとに異なるため、条件を揃えて見積もりを取り寄せてから決めるのが実務的です

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まとめ

  • 普通車の名義変更=移転登録。運輸支局で15日以内、手続きの主役は受け取る側
  • 譲る側が渡すのは譲渡証明書・印鑑証明書・委任状の3点(実印)。受け取る側は印鑑証明書・実印・車庫証明・車検証原本
  • 自分でやれば手数料500円+実費数千円。代行との差は「平日に行く手間」
  • 出戻りの原因は期限切れ・住所の不一致・車名欄・白紙委任・所有権留保の5つ
  • 名義変更しても保険は自動で移らない。等級は配偶者・同居親族のみ引き継ぎ可

なお、本記事は執筆時点の一般的な手続き・手数料にもとづいています。必要書類の細部や運用は運輸支局・自治体によって異なることがあるため、最新の情報は管轄の運輸支局・国土交通省の案内でご確認ください。