ケニアの8年ルールの記事では「古すぎると輸入できなくなる」規制が売り時を作る話を書きました。今回はその真逆です。アメリカには、古くなるほど輸入が解禁される「25年ルール」という制度があり、日本の旧車と軽トラックの相場を静かに、しかし強烈に動かしています。当サイトの輸出実務データからアメリカ向けの実像を紹介し、売り手側がどう活かせるかまで解説します。
25年ルールとは——「古いほど自由になる」アメリカの輸入規制
アメリカで販売される車は、連邦の安全基準(FMVSS)に適合している必要があり、日本仕様の右ハンドル車は原則そのままでは輸入できません。ところが、製造から25年が経過した車はこの適合義務が免除されます。これが通称25年ルールです。
ポイントは3つあります。
- 判定は「年式」ではなく製造年月。車体のコーションプレートに打刻された製造月から数えて、月単位で解禁されていきます
- 排ガス規制(EPA)には21年超+オリジナル同等エンジンという別基準があり、エンジンを載せ替えた改造車は古くても引っかかることがあります
- 2026年時点では、2001年1月以前に製造された車が対象。毎月、対象が少しずつ広がっていきます
つまりアメリカ市場から見ると、日本の旧車は「毎月すこしずつ解禁されていく宝の山」です。
実データ:アメリカへ行っているのは、この2グループ
当サイトの輸出実務データでアメリカ向けの車両を抽出すると、車齢の分布は圧倒的で、ほぼすべて(約98%)が製造25年以上。25年ルールがそのまま需要の形になっていることがわかります。中身は、はっきり2グループに分かれます(順不同)。
グループ1:JDMスポーツ・名車たち
スカイライン、シルビア、RX-7、スープラ、チェイサー、ランサー(エボリューション系)、アリスト、マークII、ステージア——日本国内専用モデル(JDM)として世界に知られたスポーツ・セダン勢です。映画やゲームで育った世代がいま購買層になっており、状態の良い個体は数百万円クラスで取引されます。国内で「ただの古い車」だった時代は完全に終わっています。
グループ2:軽トラック・軽バン
サンバー、アクティ、ハイゼット、キャリイ、ミニキャブ——製造25年前後の軽トラ・軽バンです。1台あたりの単価は数十万円と控えめですが、アメリカでは農場・牧場・広い敷地内の作業車として絶大な実用人気があり、数がコンスタントに動きます。国内では「20年落ちの軽トラなんて値段が付かない」が常識ですが、その常識はもう古い、というのが現場の実感です。アルトワークスのような軽スポーツも同じ文脈で人気があります。
公表統計でも「スポーツ系+軽トラ」の形が出ている
この2グループ構造は、当サイトのデータだけの話ではありません。公表されている輸出統計(2025年・アメリカ向け中古乗用車)でも、最も多いカテゴリは排気量2000〜3000ccのガソリン車(シェア31.5%・平均単価285万1000円)——スカイラインやスープラ、アリスト、クラウンといった直6スポーツ・セダン勢がまさにここに入ります。一方で軽乗用車がシェア16.3%(平均単価53万円)と数量で存在感を示し、乗用車全体の平均単価は172万9000円。「高単価のリアルスポーツ系と、手頃な軽」という二本柱がくっきり出ています。
同統計で実際に輸出された車両として挙がるのも、キャリイトラック、シルビア(S15)、サンバートラック、スカイラインクーペ、ハイゼットトラック、アクティトラック、クラウン(JZS171)、ランドクルーザー(UZJ100W)、アルテッツァ(SXE10)、アリスト(JZS161)など——当サイトの実務データとほぼ同じ顔ぶれです。軽トラは実用性に加えて「遊び用」としてのニーズもあるとされており、単なる作業車を超えた広がりを見せています。
「解禁の崖」——ケニアと逆向きの、月単位の壁
ケニアの記事で「輸入できなくなる月」が相場の崖を作る話をしましたが、アメリカは逆です。製造月が25年に達した瞬間、アメリカのバイヤーが買い手に加わり、相場の土俵が変わります。国内の中古車としてしか評価されていなかった車に、海の向こうの指名需要が乗る——著名なスポーツモデルで解禁直後に相場が跳ねる現象は、この仕組みの帰結です。
売り手への示唆はシンプルです。もうすぐ製造25年になる旧車を持っているなら、「解禁月まで待つ」が合理的な選択肢になりえます。逆に、すでに25年を超えている車は、いま売ってもアメリカ需要込みの土俵で競ってもらえます。
売り手が押さえるべき実務ポイント
- 製造年月を確認する。判定は年式でなく製造月。エンジンルームやドア開口部のコーションプレートで確認できます
- オリジナル度が価値になる。エンジン載せ替えや大きな改造は、EPAの21年基準に引っかかる可能性があり、米国向けとしては評価が分かれます。ノーマルに近い個体ほど強い
- 記録簿・書類を揃える。走行距離の証明や整備記録は、海外バイヤーへの説得材料としてそのまま価値になります
- 旧車・希少モデルは、査定先の「専門性」で値段が変わる。一般的な一括査定は量販中古車の相場感で動くため、JDMや旧車の海外需要を織り込んだ札が入りにくいのが実情です
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国産の実用車・軽トラの場合は、輸出ルートを持つ買取業者を含めた相見積もりが基本です。自分の車の相場感は売却価格 相場診断(個人情報不要)でも確認できます。
まとめ
- アメリカの25年ルールは「古いほど解禁される」輸入規制。判定は製造年月ベース・月単位
- 実務データでは、アメリカ向けの約98%が製造25年以上。JDMスポーツ(数百万円クラス)と軽トラ・軽バン(実用需要)の2グループが柱
- 解禁の崖はケニアと逆向き。25年目前の旧車は「解禁月まで待つ」が選択肢になる
- オリジナル度・記録簿が価値。旧車・希少モデルは専門性のある査定先へ
輸入規制が売り時を作る——ケニアの8年ルールとあわせて読むと、「いつ売るか」の解像度が一段上がるはずです。
なお、本記事の規制・相場の記載は執筆時点の公開情報と実務データの傾向にもとづく目安です。輸入の可否・条件は米国の連邦・州規制によって変わり、個別の査定額を保証するものではありません。